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桜梅桃李

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これも貰いもの。衝撃のくまモンクッキー。
こんなものまであるのか。


麒麟の翼を見ましたよ。
さすが東野さん。これも社会派ミステリで、ワーキングプア、学校教育などを盛り込んでありました。
何が凄いって、伏線がしっかり張ってあって説明が付くし、人間の心の動きに無理がないのです。
お話ですから当然作為があるわけですが、それを上手に導けないと「何でそういう行動に出るかな?」と違和感を与えることになります。ここがプロであるかどうかの力量なんでしょうね。
以下ネタバレになりますので、畳みます。

日本橋の麒麟像の下で男性の刺殺死体が見つかった。
緊急警備の中、挙動不審な若い男に会った警察官が職質を掛けると、その男は道路に飛び出し、そこで自動車にはねられ意識不明の重体となる。
刺殺死体はカネセキ金属製造本部長の青柳武明。意識不明の男は八島冬樹。
八島はカネセキ金属の派遣社員だったが、現在は解雇され無職。職質を掛けられたときに持っていたカバンが青柳のものであったことから、捜査本部は恨みによる犯行ではないかと目星を付ける。
しかし加賀は、生活圏でも通勤圏でもない日本橋に青柳がいたことに疑問を持つ。また所持品に家族が知らないデジカメとメガネケース、ネットカフェの会員証があったことから、青柳の日本橋での行動を追うべく聞き込みを始める。
メガネケースは青柳が日本橋で購入したもの。また3ヶ月前から休日に青柳が日本橋界隈を歩いていたと情報を得る。
だがその行動が奇妙であった。
七福神巡りを行い、同じ色の千羽鶴百羽をそれぞれの神社に奉納したところを撮影していたという。

八島側の聞き込みでは、八島の恋人の中原香織から、職質を受ける直前の時刻に「とんでもないことをした」という電話があったとの証言を得る。
また八島が解雇された理由というのが、国立工場内での事故だった。怪我をした八島は労災を受けないようにされたばかりか、そのまま解雇され、その指示をしたのが青柳であったと、青柳の部下の国立工場長 小竹が証言する。

捜査により、犯行当日のふたりの足取りがわかる。青柳は死亡する前にカフェで誰かと会っていたらしい。また血痕を辿ったところ、殺害現場は地下鉄構内で、そのまま日本橋まで歩いたことになる。
また八島も同刻頃に職を求め日本橋付近にいた。
この為、青柳がカフェで会ったのは八島で、その後に地下鉄構内で八島に刺され、八島は青柳のカバンを持って逃走したのではないかという見方が濃くなっていく。
しかし加賀は、地下鉄構内からこと切れた日本橋まで約300m。しかも刺されているのなら8分くらいは掛かっただろう。その間、助けを求めなかった青柳に疑問を抱く。
捜査が難航する中、八島が死亡する。
被疑者死亡で捜査を終了しようとする上層部に、納得のいかない加賀は捜査続行を主張した。

青柳の携帯電話の履歴から、息子の悠人が卒業した中学に電話していたことがわかる。
応対したのは水泳部顧問の糸川。悠人は中学3年の大会後に水泳部を辞めたが、その理由を知りたいということだった。
糸川の話から、その大会日の夜、事故があったという。
水泳部の2年の男子生徒が夜に学校のプールに忍びこみ溺れた。幸い一命は取り留めたが、今も意識不明である。
その生徒は大会のリレーメンバーだったが、好成績が残せず、責任を感じてそのような行動を取ったのではないか。それにショックを受けた為に、悠人は水泳部を辞めたのではないかと糸川は話す。

世間は「労災隠しをした為に恨まれて殺された」という、青柳に非難的な報道をされていた。
青柳宅に話を聞きに言った加賀だが、悠人もまた父親を非難していた。「労災隠しなどをしたから、ロクな死に方をしない」という悠人に、父親は日本橋の麒麟像の下で亡くなったことを加賀は告げる。
すると、悠人は血相を変えて自室に掛け込んでしまった。

世間の報道を否定する証言が八島の同僚 横田から入る。
八島と横田は工場勤めで、製品をベルトコンベアに乗せる際は安全の為、本来は一時停止しないといけない。しかしそうすると効率が悪いので、工場長の竹下の指示で実際は動かしながら作業をしていた。
本社勤めの青柳が視察に来る時は、きちんと止めていた。
八島が怪我をしたのは通常のベルトコンベアが動いているのに巻き込まれたからであって、青柳が労災隠しをするはずがないということだった。
また、日本橋付近の防犯カメラに、犯行時刻と思われる時間帯に八島が映っていた。
八島が犯人でないのなら、一体誰であるのか。そして青柳とカフェで会っていたのは誰なのか。
八方塞りの中、加賀は悠人の態度が気になり、中学で起きた事故の男子学生を尋ねることにした。

男子学生 吉永友之は現在長野で療養中で、未だに意識不明の状態であった。
友之の母 美重子は、息子の闘病生活をブログにしていた。ブログのタイトルは「キリンノツバサ」
「ブログを見て応援してくれる人がいる」と語る美重子は、1年程前から特に良くメールをくれる「東京のハナコ」という人物がいることを教える。
ハナコは友之の為に東京で七福神巡りをし、千羽鶴を奉納しているといい、同じ色で折られた千羽鶴の写真が添付されていた。
更に、暫く音沙汰が無い時期があったが、3ヶ月くらい前からまたメールをくれるようになったと話す。

東京に戻った加賀は、青柳が助けを求めずに日本橋の麒麟像まで歩いた理由が、この悠人の中学時代の事故と関連があると推測する。
後日キリンノツバサを見てみると、事故に会う前の友之の写真がアップされていた。友之と他に三人が映っており、大会のリレーメンバーの写真だった。その中のひとりが悠人だった。
急ぎ加賀は悠人と他のふたり、杉野達也と黒沢翔太の居場所を探す。
悠人、黒沢は発見したが、杉野が見つからない。地下鉄に飛び込もうとする杉野を、間一髪で助ける。
青柳を刺したのは杉野だった。

吉永友之の事故には、悠人、杉野、黒沢が関わっていた。
3年生の悠人たちに加わってリレーメンバーに抜擢された友之は、緊張の為に大会でフライングしてしまい、失格となった。
それを責める3年生たちに逆うことが出来ず、夜に4人で学校に忍びこみ、友之は強制的に泳がされた。
異変に気付いた顧問の糸川が駆け付けたときには、既に友之は意識不明になっており、問題が起こらないようにと3人を逃がしたのだった。
その後、3人は水泳部を辞め卒業したが、罪の意識に苛まれていた。
1年前、キリンノツバサのブログを見つけた悠人は、せめてもの罪滅ぼしに「東京のハナコ」と名を隠し七福神巡りをしていた。
青柳はずっと悠人が水泳部を辞めた理由を知りたかったが、わからないまま、偶然に息子のパソコンでキリンノツバサ宛ての「東京のハナコ」名のメールを見る。
それを知った悠人は、それ以来、キリンノツバサへのアクセスを止めた。
ネットカフェでキリンノツバサを詳細に見た青柳は、闘病中の子供が息子の後輩だと知る。
糸川に事故のことを聞き、悠人が「東京のハナコ」としてメールを送っているのだと気付いた。
息子の代わりに「東京のハナコ」を再開した青柳は、またそこまでする悠人は、事故に何らか関わっているのではないかと踏み、杉野から話を聞く。
カフェで杉野と会い、「事故は悠人が起こしたものだ」と言われる。別れた後、自分の嘘がばれるのを恐れた杉野は、青柳の後を付け駅構内で刺して逃亡。
犯人を知らせるわけにはいかない青柳は、思いを込めて麒麟像まで歩いた。
また、青柳が去った後に残されたカバンは八島が発見し、金欲しさに持ち逃げしたのだった。


以上が粗筋ですが、わかりますねー人間心理が。
悠人、杉野、黒沢の、恐怖からくる沈黙や罪滅ぼししたい気持ち、保身の為の犯罪。現実から逃げているわけですが、この気持ちはわかります。
そして青柳が何故助けを求めなかったか。何故麒麟像まで歩いたのか。
社会弱者である八島とか、行動動機がわかるんですよ。
お話を作る上で、この説得力は凄く重要ですものね。
人間の弱さ、美しさ、哀しさが詰まった、上質のミステリです。
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